売上アップより大切!? 資金繰り改善のための基本ポイント
2025.02.27

中小企業の経営者の皆様、売上を伸ばすことに日々ご尽力されていることでしょう。しかし、「売上が増えているのに資金が足りない」という声をよく耳にします。実は、会社経営では売上アップ以上に資金繰り(キャッシュフロー)の管理が重要です。資金繰りが健全でないと、利益が出ていても会社は倒産してしまう可能性があります。これは「黒字倒産」と呼ばれる現象で、帳簿上は黒字(利益計上)なのに手元資金が不足して支払いができず倒産するケースです。
例えば東京商工リサーチの調査によれば、倒産した企業の約5割が黒字倒産であり、42.3%もの企業が売上増加にも関わらず倒産していたというデータがあります。
つまり、売上が増えていても安心はできないのです。実際に、急成長した企業が資金繰りに失敗して倒産した例もあります。有名な黒字倒産の例として、2008年に倒産した不動産会社のアーバンコーポレイションでは、倒産直前の4年間で売上が4倍、経常利益が約13倍にまで増加していたにもかかわらず、過剰在庫の負担などから資金繰りが行き詰まり倒産に至りました。このように「利益は出ているのに資金が足りない」状態に陥れば、会社は継続できなくなるのです。
では、どのように資金繰りを改善し安定させればよいのでしょうか。ここからは、資金繰り改善のための基本ポイントを具体的に解説します。
資金繰り改善の基本ポイント
資金繰りを安定させるために、中小企業が今日から取り組める5つの基本ポイントを紹介します。いずれも専門知識がなくても実践できる内容です。
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資金繰り表を作成し、未来のキャッシュフローを「見える化」
まず取り組むべきは、資金繰り表の作成です。資金繰り表とは、一定期間の現金収入と支出の予定を一覧にした表で、将来の資金の動きを見える化するものです。これを作成することで、「いつまでに」「いくら」入金があり、「いつ」「いくら」支払いが発生するかを把握できます。資金繰り表を毎月(できれば週次や日次でも)更新すれば、将来の資金不足を事前に察知しやすくなり、早めの対策が可能です。日本政策金融公庫のウェブサイトでも資金繰り表のテンプレートが公開されているので活用するとよいでしょう。資金繰り表によって自社の入出金予定を把握し、常にキャッシュフローがプラスで回るよう経営を心がけることで、黒字倒産を回避できます。 -
売掛金の回収スピードを早める(請求・督促の強化)
売上代金の回収(売掛金の入金)をできるだけ早めることも重要です。商品やサービスを提供した後、実際に入金されるまで30日~60日かかる掛取引では、その間こちらの手元資金が減り続けるため注意が必要です。請求書は早めに発行し、入金期限を過ぎたらすぐに督促するなど回収管理を徹底しましょう。どの取引先からいつ入金があるのかを資金繰り表で常にチェックし、万一入金遅延が起これば早急に対応します。必要に応じて、取引先との契約で支払いサイト(回収サイト)を短縮してもらう交渉も有効です。売掛金の回収遅れや不良債権が発生すると一気に資金繰りが悪化しますので、入金状況のこまめな確認と迅速な対応を習慣づけてください。 -
仕入れ・外注費の支払サイトを見直し、負担を分散する
一方で、自社から支払う側の支払い条件(支払サイト)を見直すことも資金繰り改善につながります。支払サイトとは締日から実際に代金を支払うまでの猶予期間のことです。一般に、販売側ではできるだけ短く、仕入れなど購入側ではできるだけ長く設定するのが望ましいとされます。現在、仕入先への支払い条件が短期間過ぎる場合は、交渉して支払期日を延長してもらえないか検討しましょう。支払サイトを適正に延ばすことで手元に資金が残りやすくなり、資金繰りの好循環を生みます。例えば、月末締め翌月払い(30日サイト)の条件を締め後2ヶ月払い(60日サイト)に変更できれば、その分手元資金の負担が軽減されます。ただし、取引先との信頼関係もあるため、支払条件の変更交渉は誠意をもって行いましょう。 -
固定費の削減(無駄なコストを見直す)
次に、固定費の見直しです。毎月固定的にかかる家賃、人件費、リース料、通信費などのコストを洗い出し、無駄や過剰な支出がないか検討します。固定費は売上に関係なく発生するため、ここを削減できれば利益率が向上し、手元資金(キャッシュ)が増えて経営が安定します。例えば、使っていないサブスクサービスの解約、オフィスや倉庫のスペース縮小による賃料削減、設備のリース契約の見直しなど、小さなことでも積み重ねれば大きな効果があります。固定費を減らすことは即座に資金繰り改善につながるうえ、売上が落ち込む局面でも資金ショートしにくくなるため、定期的にコスト構造を点検しましょう。 -
緊急時に備えた資金調達の選択肢を持つ(公的融資・助成金の活用)
万一の資金不足に備えて、予備的な資金調達手段を確保しておくことも大切です。具体的には、金融機関からの融資枠(例えば銀行の当座貸越枠)を事前に設定しておいたり、日本政策金融公庫など公的金融機関の低利融資制度を活用できるよう情報収集しておきます。また、政府や自治体の助成金・補助金制度にもアンテナを張り、自社が該当しそうなものは積極的に申請しましょう。手元資金に余裕がないときに、無理に高金利の借入やカードローンに頼ると返済負担でさらに資金繰りが悪化しかねません。平時から信頼できる金融機関と関係を築き、資金繰りに困った際はすぐ相談できる状態を作っておくことが経営の安心材料になります。
以上の5点はどれも基本的な施策ですが、確実に実行することで着実に資金繰りは改善します。それでは実際に、資金繰り管理の巧拙によって明暗が分かれた企業の事例を見てみましょう。
成功企業の事例と失敗企業の事例
成功事例:ある製造業の中小企業では、売上が伸びていたものの一時的な資金不足に陥りかけた経験をきっかけに、資金繰り管理を徹底しました。まず毎月の資金繰り表を作成し、将来数ヶ月先までの入出金予定を社長夫人が中心となって細かくチェックしました。そして、主要取引先には請求サイクルを月2回に増やして早期入金をお願いし、逆に仕入先には支払サイト延長の交渉を行いました。また、社内の経費を見直し無駄な固定費を削減するとともに、日本政策金融公庫の低利融資枠も確保しました。その結果、資金繰りに余裕が生まれ、多少売上が変動しても安定して事業を継続できるようになりました。この企業は「黒字倒産予備軍」から脱し、着実に成長を続けています。
失敗事例:一方で、資金繰り管理を怠ったために倒産してしまった例もあります。ある企業では受注が好調で売上自体は右肩上がりでしたが、売掛金の回収条件がゆるく回収サイトが長期化していたため常に手元資金が不足していました。それにも関わらず、経営者は「売上が伸びているから大丈夫だろう」と資金繰り表も作成せずに楽観視していたのです。さらに新規事業の設備投資で支出が増え、借入金の返済負担も重なり、ついに支払日までに現金が用意できず資金ショートを起こしました。売上は順調でも資金が回らず倒産(いわゆる黒字倒産)してしまった典型的なケースです。この企業では、ほんの少し早く資金繰りの悪化に気づいていれば、融資やコスト削減など打てる手はありました。日頃からキャッシュフローに注意を払わなかったことが命取りになったと言えるでしょう。
まとめ:売上アップよりも資金繰りの安定が大切!
企業経営において、「売上=現金」ではないことを改めて肝に銘じる必要があります。どれだけ帳簿上利益が出ていても、現金が不足すれば会社は立ち行きません。売上アップの施策と同じくらい、いえそれ以上に資金繰りの安定確保に注力することが健全経営の土台です。
すぐに実践すべきポイントとしては、まず手元資金の動きを見える化するため資金繰り表を作成すること、そして売掛金回収の徹底と支払い条件の見直しです。これらは今日からでも始められ、効果も現れやすい対策です。加えて、無駄なコストを見直してキャッシュの流出を減らし、非常時に頼れる資金源を用意しておくことも忘れないでください。
最後に、資金繰りに不安を感じたら公的機関の相談窓口を積極的に利用しましょう。自社だけで抱え込まず、専門家に相談すれば改善の糸口が見つかる可能性があります。例えば、日本政策金融公庫では中小企業向けの事業資金相談ダイヤル(0120-154-505)を設けていますし、全国各地のよろず支援拠点では無料で経営相談に応じてもらえます。こうした公的サポートも活用しながら、売上至上主義に陥らずキャッシュの流れを制する経営を実践していきましょう。
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